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展示室「夢」

「夢」 − 2020年 パリ

2019年12月、中村医師の訃報に接し、初めてペシャワール会のアフガニスタンにおける水路建設プロジェクトについて知りました。

完成後に水路に問題が生じたとき、地元の方たちだけで修理可能にするために…現地で調達可能な材料を用い、江戸時代中期の工法にて建設することを決め、自ら現場で用水路建設に関わっていらっしゃいました。
用水路のおかげで、戦争によって荒廃していた土地に水と緑が戻り、多くの命が救われました。

医療者としての限界を感じ、水路建設という環境改善を通じて命を救うこと。それが、中村哲医師の夢でした。

この用水路は、山田堰(ぜき)及び堀川用水が建設モデルとなっていますが、それらは、祖父と両親を育んだ土地、福岡県を流れる筑後川にあります。
 
こんな方の存在こそを、子どもたちに知って欲しいと考え、しっかりと伝えました。
中村哲医師の夢を、この世界の少しでも多くの人々と分かち合って行きたい…と強く思います。
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"L'Humanité"

「人類」 − 2020年 パリ

2020年3月11日、9歳の娘が1月に書いた書き初めの字を用いて作品を創りました。この年は人類にとって本当に困難な年になるという予感から、
 
「なんとか、みんなで乗り越えられますように」
 
との祈りを込めて創作しました。
予感は現実のものとなり、3月12日夜に翌週からの全国休校措置の発表を経て、3月16日には大統領がフランス全土で都市封鎖をすることを発表し、フランスにおける長期に渡るウイルスとの闘いおよび混乱の時期が始まりました。

今回の件に関わる犠牲者の方に哀悼の意を表するとともに、最前線でお仕事をされているすべての方に感謝の気持ちを捧げます。
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"Le Saule Pleureur"

「人類」

「人類」

「柳」 – 2020年 パリ

大学生の頃、柳のようにしなやかでありたい…と願いつつも、若さゆえの焦燥感を抱えて苦しんでいました。そんなとき、井伊直弼の生き方から「人生を俯瞰的に捉えること」を学んだおかげで、少し肩の力を抜くことができました。


2020年、春の厳しい外出制限中に改めて彼の生涯と当時の世界情勢について学び直す機会を得ました。彼が亡くなったのとほぼ同じ年齢で今回学んだのは、「覚悟の上で生きること」でした。そして、井伊直弼も柳を非常に愛していたと初めて知りました。


この作品は、1860年のあの朝、彼が辿り着けなかった門の写真を背景に創作しました。2019年夏、霧雨の降る幻想的な雰囲気の中、大切な友人たちに同行してもらって撮影した写真です。

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「行雲流水」− 2021年 パリ

「物事に執着せず、淡々として自然の成り行きに任せて行動することのたとえ。」            
                              (禅宗のことば)

このご時世、0か1かすぐに解決策を出すことを迫られる場面に多々遭遇します。
が、世の中にはそんなに簡単に答えの出ないこともたくさんあるものです。

流れ行く雲とたゆたう水の流れを眺めながら、自然に身を任せつつ世の中を注意深く見つめ直す時間も大切にしたいです。
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「満身の精神」– 2021年 パリ

この作品では、経済と道徳を両立させるべきという信念を持っていた渋沢栄一氏(1840年〜1931年)が残したことばを表現しました。









新型コロナウイルスによる騒動が落ち着かない日々ですが、このトンネルの向こうには希望の光があることを願い、そこに至るまで、些細な事にも心を込めて大切に過ごしたいとの決心を表現しています。

今回は、特別に藤沢在住の書道の師である菊地光道先生の書を作品に使わせていただきました。初めての共同作品となります。菊地先生に心から感謝いたします。
「凡そ一事を為し、一物に接するにも必ず満身の精神を以てすべし。
瑣事(さじ)たりとても之をゆるかせ(おろそか)に付すべからず。」

=事を成し、物に接するには、必ず「満身の精神」をもってせよ。
些細な事であっても、いい加減に扱ってはならない。
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