"「環」〜巡るいのち" – 2018年 パリ
受け継がれ巡りゆくいのちを表現しました。
すべては繋がっており、私たちはその大きな流れの中にある「いのちを受け継ぐ存在」です。そのことを自覚できたときに安らかさが訪れる…そんな気がしています。
背景には、2017年春に15年ぶりに日本で見ることができた桜の写真を使用しました。
次に日本の桜を見られるのはいつなのか分かりませんが…
家族で見ることができたあの桜の美しさは、それぞれの心にいつまでも残ることでしょう。
"倶会一処(くえいっしょ)"
– 2017年 パリ
辻仁成氏の小説「白仏」は、私の祖父が生まれ育った町を舞台にしています。
お話の中に、「倶会一処(くえいっしょ)」ということばが出てきます。とても印象に残ることばです。
「人間は貧しか者も富む者も本来は一緒っちゅう言葉たい。世の中のくだらない決まり事や価値観を越えて人間の存在は一つっちゅうことを意味するとたい」
(「白仏」より引用)
これは、『仏説阿弥陀経』に出てくる「倶(とも)に一つの処(ところ)で会う」というご文(もん)。死んだ後も同じ阿弥陀さまの浄土でまた再会させいただくという意味だそうです。
存命中だった祖父に本をプレゼントし、小説の舞台である大野島の「勝楽寺の白仏」を一緒に見に行きました。厳しい日差しの照りつける暑い夏の日でした。まだ娘たちが生まれる前の話です。
祖父が2012年に亡くなり、子どもたちもだいぶ大きくなったため「白仏」を再読した2017年。この「倶会一処」作品を創作しました。
1年後、娘たちを連れて祖父母のお墓参りに行った際、両家のお墓の周囲に「倶会一処」と彫ってある墓石がたくさんあるのを発見しました。鳥肌が立ちました。
幼い頃から何度もお墓参りをしていますが、それらの墓石の存在に気付いていませんでした。お墓にて、彼方(あちら)での再会を願った人々の想いを感じました。
この作品の背景には、「花まつり」生まれの娘を連れて行った際に撮影した鎌倉の大仏(阿弥陀如来)の写真を使用しました。
阿弥陀如来は浄土宗や浄土真宗の本尊で、「念仏を唱えて精進する者は極楽往生できる」という教えを説く仏さまだそうです。
小説「白仏」に触発されこの作品を創作したことで、仏教について知識を深める良い機会を得られました。また、すでに彼方にいる祖父母からのメッセージを受け取れたように思います。
写真:祖父母の眠るお墓で出会った墓石と鎌倉の大仏像
"美" – 2015年 パリ
4年の間に3度も引越しをするという、なんとも落ち着かない期間を過ごしていました。
花を咲かせなくなった胡蝶蘭。引越しの度にサヨウナラしようか迷ってしまった私ですが、4年目の冬に見事な花を咲かせてくれました。私が迷っていた間、開花の能力を秘め続けてくれていたのです。
その胡蝶蘭の一輪の写真を背景として、この作品は創られました。